☆回覧等_2026

講演会「中津川・米内川の自然環境」が開催されました。

2026年9月11日

令和8年9月11日(金)

時間 10:30~12:00 開場 10:00
会場 山岸児童・老人福祉センター
   盛岡市下米内一丁目3-18
主催 綱取ダムの環境と清流を守る会

参加者は、43名でした。

中津川・米内川の自然環境

岩手県立博物館 主任専門学芸員

渡辺修二(生物部門・無脊椎動物担当)

1 中津川・米内川と、氾濫・治水の歴史

 ・中津川 北上川水系の一級河川。盛岡市街地を流れ、上流に綱取ダム。支流の米内川が下米内付近で合流。

 ・「穏やか・自然豊か・清流」のイメージの一方、『盛岡市史』には氾濫の記録が繰り返し登場。明治 43 年の五橋同時流失が本格的な治水工事の契機となった。1982年に綱取ダムが完成。

 ・薪炭の時代、流域の山林は伐採で荒廃 → 保水力の低下・土砂流入の増加。明治43年以降の水源地植林、昭和30年代以降の燃料転換と大規模造林で森林が回復。

 ・森林の洪水緩和=樹冠での遮断と蒸発/土壌への浸透/葉からの蒸散。ただし集中豪雨・長雨で土壌が飽和すると発揮されない。

2 水質 - 下水道の整備で大きく改善した

調查地点1981(S56) 2015(H27) 2024 (R6
落合橋0.6/4600 0.7/1700 0.6/130
水道橋1.0/6300 0.8/3500 0.5/46
御 橋1.9/240000.7/2500 0.6/61

・各欄は「BOD (mg/L)/大腸菌数(100mL 中)」。BOD は 1.0mg/L 以下で「大変きれいな水」。大腸菌は令和4年度から測定法・基準値が変更(旧 MPN 法 現 CFU法)のため単純比較はできない。出典:盛岡市公害概況資料集・環境測定報告書。

・綱取ダムの上下流比較:ダム直下 BOD が高い。初夏と秋に水温が高くなる。

3 魚と河川構造物  ー 「つながっていない川」の影響

・中津川の魚類:ヤマメ・サクラマス、アブラハヤ、ウグイ、カジカ、イワナ、サケ、アユ、スナヤツメ、アユ、カマツカ、ヒガシシマドジョウ、トウヨシノボリなど。

 外来種: オイカワ、ナマズ、ビワヒガイ、モツゴ絶滅危惧種:タナゴ(絶滅危惧 IB類)、ギバチ・スナヤツメ (絶滅危惧 II 類)、カジカ(準絶滅危惧)

・横断構造物と分布(辻ほか 2020):

 採集された魚はヤマメ 45.9%・アブラハヤ 20.5%・カジカ 19.9%・ウグイ 9.8%で96%を占めた。

 ウグイの75.5%、アブラハヤの56.7%が加賀野馬手堰(待堰)より下流に集中

  → 魚道が十分に機能していない。最下流の地点でしか確認されない種(タナゴ、モツゴなど)も多い

・河床のアーマーコート化(粗粒化): 砂 の供給が減り河床が固くなる。ダム直下は8mm 未満の砂 が1.6%(他地点は 13~15%)で、底生魚や水生昆虫の生息が困難。合流後は米内川からの供給で回復。

・綱取ダムの評価:治水効果は大きい(令和6年8月 台風第10号でピーク流量 65%低減、水位も上流57cm・下流 22cm 低減)。一方で遡上の障壁であり魚道も設置できない。中津川を遮断する代わりに、せめて米内川を遡上できる配慮が欲しかった。

4 河川生態系を支える水辺林

・水辺林=水域と相互に作用する森林。水域→森林:土壌水分の供給、氾濫による更新/森林→水域:日光の遮断、落葉・倒木の供給。

・伐採すると → 落下昆虫の減少/水温の上昇/隠れ場・越冬場の喪失/産卵環境の悪化

・魚類の生息環境のために必要な水辺林の幅:8~30m (リバーフロント研究所報告 2002):

 水辺林は、工事用道路・堤防、土地利用、川の拡幅、木の根による堤防破損の防止、流木化の防止、景観などの理由で伐採されがち。「きれいな川辺」のために切られることもある。逆に、ダムで流量が安定しすぎて攪乱が起きず更新されない問題もある。

5 放流事業をどう考えるか

・中津川・米内川ではヤマメ・アユ・サケの放流が行われてきた。

・ヤマメ・アユ: 河川内で成長するため在来魚と餌・生息場所をめぐり競合しうる。環境収容力を超える放流は要注意(Terui et al. 2023)。増やすには生息環境の改善のほうが有効。

・サケ:放流後すぐ降海するため競合は小さい。産卵場所も、サケは伏流水の湧出箇所、サクラマス・ヤマメはより上流部とほとんど競合しない(堰で遡上が妨げられれば競合も)。近年は沿岸水温が高く稚魚の死亡率が高く、回帰が少ないといわれる。

・放流には「釣れる川」 「サケがのぼる街」としての魅力を保つ意味がある。利用区間と天然魚の保護区間をゾーニングすれば両立できる。原生的な自然に戻すことが目的ではない。

6 これからの中津川・米内川

・在来生物の持続可能性に配慮/安全管理・生態系・景観のバランス/不可逆な変化には慎重に(堰堤設置時の配慮など)。

・できるところから: 魚道の改修、河道の再生、水辺林の回復。中洲の除去や水際の改良は、かわまちづくり懇談会などで話し合われ一部実施済み。

川の機能を回復し、維持するために

 ① 川がつながっていること(遡上・降下ができる)

 ② 土砂が動いていること(浮石がある。瀬や淵)

 ③ 水辺に樹木の覆いがあること(水温・餌・隠れ場)

 ④ ときどき攪乱が起きること(水辺林の更新、河原の維持)

上流から下流までつながると、中津川・米内川はもっと生物的に豊かな川になる。

主な参考文献:辻盛生ほか (2017, 2020) 応用生態工学・総合政策/中村太士(2004) 森林と河川の相互作用/佐藤ほか(2001)・柳井(2001) J.jpn. For. Soc. / 山田・中村(2001) 日林北支論/河畔林の保全・整備方針について (2002) リバーフロント研究所報告/Terui etal. (2023) Intentional release of native species undermines ecological stability/国土交通省 河川水辺の国勢調査/盛岡市 公害概況資料集・環境測定報告書/盛岡市史/岩手県(2024) 綱取ダムの治水効果について ※詳細は講演スライドを参照

上流から下流までつながると、中津川・米内川はもっと生物的に豊かな川になる。

講演・意見交換のAI(Gemini)による要約

1. 自然環境への配慮と維持管理

  • 原生状態への復元と現実的な管理: 魚の放流や河川管理の目的は、必ずしも元の「原生的な自然」に戻すことではない。既に人の手が入っている川であるため、安全管理(防災)とのバランスを考慮しつつ、現況の環境に適した持続可能な管理が必要である。
  • 不可能な変化への警戒: 川の環境において不可逆(元に戻せない)な変化を引き起こす判断を行う際は、慎重であるべきである。
  • 魚道と河道(砂利底)の改善: 人の手で川の流れが切断されている箇所(堰や魚道など)を改善し、ヤマメやサケだけでなく遊泳力の弱いヨシノボリやサクラマス等の多様な魚類が行き来できる環境作りが求められている。また、中州や川底に砂が溜まって狭まる問題に対しては、人の手で定期的に削るなどの手助けを行って多様な水辺や深い瀬・浅い瀬を維持する必要がある。

2. 地域住民の視点と歴史的背景・生物観察

  • 生活・農業と水質の歴史: 昭和40年代後半の水田耕作や農薬の使用、機械化(油の使用など)によって川の水質や生態系に変化が生じた経験や、地域の歴史的背景が語られた。
  • 地域における生物の現状: 中津川や米内川の流域では、ホタルの保護活動(カワニナの放流や観察会の実施)や、スナヤツメ、サワガニ、サクラマス、ニホンウナギなどの多様な水生生物の生息・確認事例が報告されている。

3. 今後の課題と展望

  • 米内川と中津川の一体的な環境保全: 中津川の環境を守り改善していくためには、その支流である米内川も含めた広域的な整備・景観管理(樹木の適度な間引きなど)が不可欠である。
  • 地域全体での環境意識の共有: 講演会等の活動を通じて、米内川・中津川にとどまらず、盛岡市全体の河川・自然環境について市民や行政が共に考え、協働していくことが期待されている。

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