だんご坂

だんご坂

 寺並山の洞に入ってすぐ左側方向に細道を上って行くと杉林があり、春ともなればその林の中に春蘭の花が咲き、なお登って頂に出ると西に向って畑のほとりに野原が広がり一帯の草原は、つぼけ、さらんこ等の花畑になっていました。

 そこからだらだら坂を下って行くと、永福寺山から名乗坂に通ずる道に出ます。この道は小本街道の古道と云われている道で、その附近にだんご坂と呼ぶ一角があります。

 遠い昔、そこに一軒の茶店があり、一人の老婆がだんごを売っていました。ある日、弘法大師様が通りかかりだんごを買おうとしましたが、老婆はみすぼらしい姿をした大師様を見て、だんごを皆土の中に埋めてかくして、無いとことわりました。大師様が通り過ぎて行ったので老婆が土の中からだんごを掘り出して見たところ、だんごは皆石ころに変っていました。

 子供の頃母につれられ其のだんご坂に行き、赤土を掘って見た処、赤土の固い小石のような物が出て来て、割って見ると、どれも中に黒い餡の様な物が入っておった事を覚えています。

2022年1月29日

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