おへぐり

おへぐり

 伊勢の沢から至沢に至る米内川に沿って通る道をおへぐりと呼びました。曲りくねって通る道の意味のようです。

 両岸は見上げる山がおし迫って道路は米内川の左岸の山の真下の流れに沿って通り道路下の川岸に底を清流に洗われて小山のように大岩が二個十数米位の間隔をおいて、どっかりと坐り、川魚の繁殖の場所となっており、その大岩を、「おへぐり」の大岩と呼んでいました。

 右岸の山に、二、三ヶ所、切り立って露出した長さ数十米、幅数米の苔むした岩石が、川面に向って下り、枝振りの見事な松が生え、その裾を山田線の鉄橋が流れにかかり、春は左岸の山つゝじ、右岸の水面に垂れて咲く藤の花、秋は両岸の山の紅葉と下米内の「おへぐり峡」と呼びたい風景でした。

 今はその一帯は採石場と変り、「おへぐり」の大岩も姿を消し道路も切り替えられて昔日を偲ぶ何物もありません。

2022年1月29日

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